水平対向6気筒エンジンの慣性力・偶力
概要
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以下の水平対向6気筒4ストロークエンジンについて解析する。
慣性力・慣性偶力については
エンジンの慣性力と慣性偶力の概論を参照されたい。
シリンダは前から左バンクが1,3,5、右バンクが2,4,6の順番である。
前から見るとエンジンは右回転である。
点火順序は 1-6-3-2-5-4 とする。
点火間隔は720度/6=120度である。
クランクピンの配置は、下図のとおりである。
角度を入力して指定角度をクリックすると横断図及び平面図が変化します。
自動回転をクリックするとエンジンが回転します。回転を止めるにはSTOPをクリックします。
※θはクランクシャフトを中心とし水平方向とクランクピンに挟まれた右回りの角度である。
各シリンダー横断図
特徴
ボクサーがなぐり合っているようにも見えるのでボクサーエンジンとも呼ばれる。
左右のピストンが逆方向に動作するため、慣性力が打ち消される。したがって、クランクシャフトにウェイトがついていないのでクランクシャフトが軽くなる。
SUBARUの場合 クランクシャフトの揺り振動や曲げ振動を抑制するために直列6気筒エンジンと同じくメインベアリングが7個ベアリングとなっている。
水平対向の1つのメリットである全長が短いという利点を生かすために、メインベアリングの幅やクランクウェブを薄くしている。
メインベアリングの幅は狭くしづらいのでクランクウェブを極端に薄くしている。人によってはカミソリクランクと呼んでいる人もいる。
クランクウェブが薄いのでペラペラした感じで意外と硬性がないのでこの辺がごろごろ音などの下品な音につながりやすい。
エンジンが横長になるので、タイヤの切れ角を確保するためにショートストロークのエンジンにしたがる。それでも小回りの利かない車になりやすい。
ちなみに、V型バンク角180度エンジンは左右バンクでクランクピンを共有しているため、左が上死点ならば右は下死点となる。
2次慣性偶力もバランスするので完全バランスである。
各気筒の行程
下図は青が吸気バルブが開いている期間、赤が排気バルブが開いている期間を示している。グラフの左側の数字はシリンダ番号を示している。
1次慣性力
エンジンが1回転に1回発生する成分で、
に係数を乗じたものである。
右方向を+とし1-2シリンダを合成すると
なので、1次慣性力はキャンセルされる。 他の気筒も同様にキャンセルされるのでエンジン全体で発生しない。
2次慣性力
エンジンが1回転に2回発生する成分で、
に係数を乗じたものである。
第2シリンダーが右へ回る方向を+とし1-2シリンダを合成すると
なので、2次慣性力はキャンセルされる。 他の気筒も同様にキャンセルされるのでエンジン全体で発生しない。
4次慣性力
エンジンが1回転に4回発生する成分で、
に係数を乗じたものである。
第2シリンダーが右へ回る方向を+とし1-2シリンダを合成すると
なので、4次慣性力はキャンセルされる。 他の気筒も同様にキャンセルされるのでエンジン全体で発生しない。
6次慣性力
エンジンが1回転に2回発生する成分で、
に係数を乗じたものである。
第2シリンダーが右へ回る方向を+とし1-2シリンダを合成すると
なので、6次慣性力はキャンセルされる。 他の気筒も同様にキャンセルされるのでエンジン全体で発生しない。
1次慣性偶力
上からエンジンを見ると重心に対して前後方向が対称でないためモーメントが発生することがある。
ボアピッチをa、左右間のシリンダのずれをbとする。
第2シリンダーが右へ回る方向を+とすると
は
なので
よって1次モーメントはキャンセルされる。
2次慣性偶力
上からエンジンを見ると重心に対して前後方向が対称でないためモーメントが発生することがある。
ボアピッチをa、左右間のシリンダのずれをbとする。
第2シリンダーが右へ回る方向を+とすると
よって2次モーメントはキャンセルされる。