遊星歯車機構

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概要

遊星歯車機構は、有段式AT(ステップ式オートマチックトランスミッション)やドリルの減速部、セルモータの減速機構、洗濯機の減速機構等に用いられています。
ここでは遊星歯車機構を1個用いた場合の速度比又は減速と回転方向を求めてみます。
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遊星歯車機構(planetary gear mechanis)の種類

遊星歯車機構を1個用い1個の歯車を固定した場合以下の3種類の組み合わせが成立します。
ソーラー型 A B D C(固定) プラネタリ型 A(固定) B D C スター型 A B D(固定) C SVGの代替画像
太陽歯車(sun gear)の歯数Za
遊星歯車(planetary gear又はplanetary pinion gear)の歯数Zb
遊星キャリア(planetary carrier)
内歯車(outer gear又はring gear又はinternal gear)(リングギア又はインターナルギア)の歯数Zc
太陽歯車・遊星歯車・内歯車はそれぞれ歯がかみ合っているので、ギアが回転したときの歯数(弧長)は等しくなります。
遊星歯車は、太陽歯車及び内歯車にかみ合っているので双方の移動する弧長分回転します。
(Zc+Za) \times Nc=Zc \times Nc+Za \times Ns
※ Nc:内歯車回転速度, Nc:遊星キャリアの回転速度, Na:太陽歯車の回転速度
遊星歯車の回転の基本は以下の式の通りです。
nc:内歯車回転数
nd:キャリア回転数
na:太陽歯車回転数
Za:太陽歯車歯数
Zc:内歯車歯数
\displaystyle (nc-nd)=-\frac{Za}{Zc}(na-nd)

糊付け法

キャリアを固定して太陽歯車を1回転させた後、固定されるギアが回転した分、歯車どおしを糊付けし全体を逆回転させるとその時の回転の比を求めれば歯車の回転比が求まります
ここでは、太陽歯車の歯数をZa=32、遊星歯車の歯数をZb=8、内歯車の歯数をZc=48 太陽歯車の回転角度をθa、遊星歯車の回転角度(自転)をθb、内歯車の回転角度をθc、遊星歯車の公転角度をβ、右回りを+、左回りを-として説明します。

キャリアを固定して太陽歯車を回転させた場合の角歯車の回転角度

キャリアを固定した場合、遊星歯車は公転しないので単なる3個の歯車組み合わせとなります。
初期位置 SVGの代替画像 45度 SVGの代替画像 90度 SVGの代替画像 360度 SVGの代替画像
θa 0 45 90 360
θb 0 \displaystyle -\frac{Za}{Zb} \theta_a=-180 \displaystyle -\frac{Za}{Zb} \theta_a=-360 \displaystyle -\frac{Za}{Zb} \theta_a=-1440
θc 0 \displaystyle -\frac{Za}{Zc} \theta_a=-30 \displaystyle -\frac{Za}{Zc} \theta_a=-60 \displaystyle -\frac{Za}{Zc} \theta_a=-240
β 0 0 0 0

キャリアを固定して太陽歯車を1回転させた後、糊付けをして逆方向に回転させた場合の角歯車の角度

各歯車を糊付けして位置関係を保ったまま全体を回転させます。
1項で回転した分、逆に回して歯車の回転角を打ち消せばその歯車は固定されたとみなせます。
θa=360度
-(Za/Zc)=-240度回転 SVGの代替画像 -(Za/Zb)=-1440度回転 SVGの代替画像 -(Za/Zb)=-360度回転 SVGの代替画像
θa' \displaystyle -\frac{Za}{Zc} \theta_a=-240 \displaystyle -\frac{Za}{Zb} \theta_a=-1440 -\theta_a=-360
θa \displaystyle \theta_a+\theta_a'=600 \theta_a+\theta_a'=-1080 \theta_a+ \theta_a'=0
θb \displaystyle -\frac{Za}{Zb} \theta_a+\theta_a'=-1200 \displaystyle -\frac{Za}{Zb} \theta_a+\theta_a'=-1800 \displaystyle -\frac{Za}{Zb} \theta_a+\theta_a'=-1800
θc \displaystyle -\frac{Za}{Zc} \theta_a+\frac{Za}{Zc} \theta_a'=0 \displaystyle -\frac{Za}{Zc} \theta_a+\frac{Za}{Zc} \theta_a'=-1680 \displaystyle -\frac{Za}{Zc} \theta_a+\frac{Za}{Zc} \theta_a'=-600
β \theta_a'=240 \theta_a'=-1440 \theta_a'=-360

ソーラー型

サンギアを固定しています。
内歯車入力、キャリア出力とします。
ソーラー型 SVGの代替画像

サンギアが32歯、内歯車が48歯の場合の回転数の比は以下の通りとなり減速されることが分かります。
\displaystyle \frac{Zc}{Za+Zc}=\frac{48}{32+48}=0.6

糊付け方

キャリアを固定し太陽歯車を1回転
キャリアを固定し太陽歯車を1回転した場合の回転数は、普通の歯車と同様である。
太陽歯車
\alpha=1
遊星歯車
\displaystyle -\frac{Za}{Zb}
内歯車
\displaystyle -\frac{Za}{Zc}
歯車を糊付けして太陽歯車を逆方向に1回転
歯車を糊付けして太陽歯車を逆方向に1回転させた時の回転数は以下のとおりである。
太陽歯車
-1
遊星歯車
-1
内歯車
-1
キャリア
-1
加算
太陽歯車
1-1=0
遊星歯車
\displaystyle -\frac{Za}{Zb}-1
内歯車
\displaystyle -\frac{Za}{Zc}-1
キャリア
-1
内歯車を入力
キャリアを出力(遊星歯車の公転)
\displaystyle \frac{-1}{-\frac{Za}{Zc}-1}=\frac{1}{\frac{Za}{Zc}+1}=\frac{1}{\frac{32}{48}+1}=0.6
キャリアを出力(遊星歯車の自転)
太陽歯車の回転角をαとすると
キャリアを固定して角度α回転させると
遊星歯車
\displaystyle -\alpha \frac{Za}{Zb}
内歯車
\displaystyle -\alpha \frac{Za}{Zc}
糊付けして角度α逆回転させると
遊星歯車
\displaystyle -\alpha \frac{Za}{Zb}-\alpha
内歯車
\displaystyle -\alpha \frac{Za}{Zc}-\alpha
内歯車を入力とすると
\displaystyle \beta =-\alpha \frac{Za}{Zc}-\alpha
\displaystyle \beta =-\alpha (\frac{Za}{Zc}+1)
\displaystyle \alpha=-\frac{ \beta }{\frac{Za}{Zc}+1}
遊星歯車
\displaystyle -\alpha \frac{Za}{Zb}-\alpha=- \alpha (\frac{Za}{Zb}+1)
遊星歯車
\displaystyle \frac{ \beta }{\frac{Za}{Zc}+1} \big( \frac{Za}{Zb}+1 \big)

プラネタリ型

内歯車固定、 太陽歯車入力、キャリア出力とします。

糊付け方

キャリアを固定し太陽歯車を1回転
キャリアを固定し太陽歯車を1回転した場合の回転数は、普通の歯車列と同様である。
太陽歯車
1
遊星歯車
\displaystyle -\frac{Za}{Zb}
内歯車
\displaystyle -\frac{Za}{Zc}
歯車を糊付けして太陽歯車を逆方向に内歯車が回転した分回転させる
歯車を糊付けして太陽歯車を逆方向に\frac{Za}{Zc}回転させた時の回転数は以下のとおりである。
太陽歯車
\displaystyle \frac{Za}{Zc}
遊星歯車
\displaystyle \frac{Za}{Zc}
内歯車
\displaystyle \frac{Za}{Zc}
キャリア
\displaystyle \frac{Za}{Zc}
加算
太陽歯車
\displaystyle 1+\frac{Za}{Zc}
遊星歯車
\displaystyle -\frac{Za}{Zb}+\frac{Za}{Zc}
内歯車
\displaystyle -\frac{Za}{Zc}+\frac{Za}{Zc}=0
キャリア
\displaystyle \frac{Za}{Zc}

太陽歯車を入力

太陽歯車が1回転したときのキャリアの回転数は、
\displaystyle \frac{ \frac{Za}{Zc} }{ 1+ \frac{Za}{Zc} }=\frac{1}{1+\frac{Za}{Zc}}
減速比は
\displaystyle 1+\frac{Za}{Zc}
遊星歯車の自転
太陽歯車の回転角をαとすると
キャリアを固定して角度α回転させると
太陽歯車
\alpha
遊星歯車
\displaystyle -\alpha \frac{Za}{Zb}
内歯車
\displaystyle -\alpha \frac{Za}{Zc}
糊付けして角度
\displaystyle \alpha \frac{Za}{Zc}逆回転させると
太陽歯車
\displaystyle \alpha+\alpha \frac{Za}{Zc}
遊星歯車
\displaystyle \alpha \frac{Za}{Zc}
加算
遊星歯車
\displaystyle -\alpha \frac{Za}{Zb}+\alpha \frac{Za}{Zc}=\alpha (\frac{Za}{Zc}-\frac{Za}{Zb})
太陽歯車を入力とすると
\displaystyle \beta = \alpha +\alpha \frac{Za}{Zc}= \alpha (1+\frac{Za}{Zc})
\displaystyle \alpha = \beta \frac{1}{1+\frac{Za}{Zc}}
遊星歯車
\displaystyle \alpha (\frac{Za}{Zc}-\frac{Za}{Zb})= \beta \frac{1}{1+\frac{Za}{Zc}} (\frac{Za}{Zc}-\frac{Za}{Zb})

プラネタリ型 SVGの代替画像

スター型

スター型

outer gear
キャリア固定
キャリアが固定されているので遊星歯車が公転しませんので遊星歯車といい難いですが、便宜上スター型といわれている。
キャリアを固定し太陽歯車を1回転
キャリアを固定し太陽歯車を1回転した場合の回転数は、普通の歯車と同様である。
太陽歯車
1
遊星歯車
\displaystyle -\frac{Za}{Zb}

内歯車 \displaystyle -\frac{Za}{Zc}
スター型 SVGの代替画像