TA8207Kパワーアンプ

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概要

標準回路の電圧利得の計算方法


オープン利得が無限大なら電圧利得は下記の式で示される

\displaystyle \frac{30K+45+Rf}{45+Rf}

データーシートによるとクローズドループ時の電圧利得は40dB以上としないと発振すると記載されている。

電圧利得40dBのRfは下式で算定できる。

\displaystyle \frac{30k+45+Rf}{45+Rf}=100
30045+Rf=4500+100Rf
100Rf-Rf=30045-4500
\displaystyle Rf=\frac{25545}{99}=258\Omega

E6系の抵抗での電圧利得は下記のとおりとなる。

Rf Av Av dB
668 56.5
10Ω 546 54.7
15Ω 501 54.0
22Ω 449 53,0
33Ω 386 51.7
47Ω 327 50.3
68Ω 266 48.5
100Ω 208 46.4
150Ω 155 43.8
220Ω 114 41.1

モデリング

モデリングする回路

下図の回路をモデリングする。ICピン番号とノード番号は同一とした。


目的

利得を40dB以下にした場合や反転アンプ等にした場合の周波数特性を解析するためにモデリングする。AC解析用に作成する。

ポール

オープンループおよびクローズドループの実測よりTA8207Kの内部に1つのポール(LPF)が存在すると仮定する。510Hz

ブートストラップコンデンサの接続の有無及び容量の違いにほとんど周波数特性の違いがみられないことからモデルでは考慮しない。

ブートストラップコンデンサの有無によりオープンループゲインが変わらない。
ブーストラップコンデンサがない場合の出力電圧は電源電圧(VCC)-1.35Vでクリッピングする。ブートストラップコンデンサを接続するとほぼVCCまで出力することができる。
ブートストラップの接続位置(TA8207Kのピン4)ではVCC-0.6V程度の直流電位となっている。ブートストラップコンデンサを接続することにより電源電圧/2分の電圧が加算されるため電源電圧よりピン4は高い電圧となる。

ちなみにGNDまでは出力できず、0.6Vほど残る。したがってブートストラップコンデンサを接続した場合のピン2の出力電圧の範囲は、0.6~VCCである。接続しない場合は、0.6~VCC-1.35Vである。

バイアス回路に接続されるコンデンサ(TA8207Kのピン4に接続するコンデンサを示す)により低域の周波数特性に変化が見られることからHPFする。
なお、ピン4で入力信号と関連した波形が観測される。バイアスコンデンサが47μFの時、出力信号の667分の1出力と同相の信号が発生している。容量を増やすと発生電圧が減る。クロストロークの要因の1つとなっているのであろう。

シミュレーション結果

シュミレーションで得られた結果は下図のとおりである。

シミュレーションファイル



* TA8207K AC Model

.ac dec 20 1 10MEG
*.tran 1ns 1.5ms

vs      60              0       ac      1V sin(0V 1.41V 1k)



ri1     6               0       0.1
cb      59              5       47uF
rf1     60              59      100
rf2     59              2       20k

cl      2               0       0.1uF
co      2               20      1000uF
rl      20              0       8


*TA8207K model

r11     6               0       30k
r12     5               58      45
r13     2               58      30k

e2      57 0 6  58      23000

* HPF Bias

c2      57              56      47uF
r21     57              56      200
r2      56              0       100

e3      55 0 56 0       1

* LPF

r4      55              52      24k
c4      52              0       13000pF

* Power Stage

e5      50 0 52 0       1
ro      50              2       2

.probe
.end

低ゲイン化非反転アンプのシミュレーション結果

パワーアンプICに帰還抵抗が内蔵されておりゲインが下げられないので入力側で絞らざる得ないため使いづらい。外部に帰還抵抗を追加して利得を減らした場合をシミュレーションしてみた。

低ゲイン化の考え方は、低ゲイン化(非反転アンプ)を参照してください。




Rfを1k,4.7k,10k,22kでシミュレーションを行った。
9.682dB,19.570dB,24.375dB,28.590dB
1k,4.7k,10kでピークが見られるため位相補正が必要となる。

低ゲイン化反転アンプのシミュレーション結果

パワーアンプICに帰還抵抗が内蔵されておりゲインが下げられないので入力側で絞らざる得ないため使いづらい。外部に帰還抵抗を追加して利得を減らした場合をシミュレーションしてみた。

低ゲイン化の考え方は、低ゲイン化(反転アンプ)を参照してください。




Rfを1k,4.7k,10k,22kでシミュレーションを行った。
6.231dB,18.606dB,23.834dB,28.262dB
1k,4.7kでピークが見られるため位相補正が必要となる。

BTL化

TA8207KパワーアンプのBTL化

製作

電源電圧は12Vとし電圧増幅率は10倍~20倍程度とする。
仕上がり利得が低いため、位相補正を行う。
位相補正を行う端子がないため、正負入力か出力で行う方法しかない。

高域のループゲインを下げて位相余裕を稼ぐ

負入力端子にコンデンサを接続し、高域の帰還率を小さくする。
負入力は低インピーダンスなので、大きなコンデンサが必要となる。また、バイアスコンデンサ等により周波数特性が複雑となりフラットとならない。

正負入力端子に抵抗とコンデンサを接続

入力側にLPFを設けドミナントポールを低域にずらすことにより第2ポールの位相が回る前にオープンループゲインを下げ、ループゲインを1以下にする。
ここでは、この方法を採用する。
シュミレーションでオーディオ帯域の周波数特性フラットにしてピークが生じないような定数にして実際に製作してみたところ発振に至った。
結局、標準回路で外付け帰還抵抗を220Ωに戻した。

発振する回路


現段階の最終仕様