三相誘導電動機の基本

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三相交流と三相誘導電動機の回転原理

三相交流は、それぞれ120度ずつ位相がずれた交流です。以下の図の赤、青、緑がそれぞれの相となります。
三相交流をベクトルで合成すると、円の中の大きな矢印のような状態となります。
三相を単純に足し算すると絶えず0Vとなり電線の本数を省略することができます。
U V W W U V 0 90 180 270 π/2 π 3π/2

image/svg+xml F B i U V W 手前
電流の向き
 ⊙:画面手前に流れる
 ⊗:画面奥へ流れる

3個の固定子に三相交流を流すと回転磁界が発生します。
上図は、磁極がN極1個と、S極1個で計2極ですので、2極の三相誘導電動機です。
上図の赤色がN極青色がS極を示します。
磁力線の向き(N極からS極への向き)は、動く方向は、回転磁界の方向とすると フレミングの右手の法則により籠型の回転子のローターバーに起電力が流れる。固定子がS極で回転磁界が時計方向の場合、力の方向は相対的に回転磁界が先行しているため、回転磁界を固定すると導体が反時計回りなので右手親指が、反時計回りの方向とすると中指が磁力線の向きである。磁力線が上を向いているときは、手前から奥に起電力が発生する。
起電力が流れると回転磁界と磁力線の向きにより導体が回転する力が発生する。その向きは、フレミングの左手の方向により決まる。
すなわち回転磁界を追っかけて少し遅れて、回転子が回転する。
回転方向は、左中指が手前から奥へ、磁力線が上向きの場合、左で親指は、時計回りとなるため回転子は時計回りである。
回転磁界と回転子が同一回転となると、導体が動かない状態と同一となるので、導体に力が発生せず、トルクが0となる。
回転子の方が回転磁界より速くなると、導体の力の方向が逆になりブレーキが掛かる。
外側の3個のコイルが固定子、円が回転子で、12個の小さい円がローターバーで円の中の図形は電流の流れる方向を示しています。
ローターバーは回転子の前後のエンドリングに接続されています。
回転磁界は、交流の1周期で2極分進むため、2極では360度で周波数と同一回転数、4極では180度進むため周波数の半分の回転数となります。
フレミングの法則


同期速度

固定子の1分間あたりの回転磁界の速度を表します。
\displaystyle Ns=\frac{ 120 \cdot f}{p}
極対数(磁極数の1/2):p
f(Hz):周波数

すべり(滑り)とすべり周波数(滑り周波数)

すべりとは同期速度に対して回転子の回転数が遅い状態をいう。
滑り周波数は、回転子に誘導された起電力の周波数であり、固定子と回転子の相対速度を表す。
同期速度と回転数が一致していないため、非同期モータに分類される。
停止しているときは滑りは1となる。
同期速度で回転しているときは滑りは0である。
\displaystyle S=\frac{ Ns-N}{Ns}
\displaystyle f2=S f
S:すべり
Ns:同期回転数(rpm)
N:回転子回転数(rpm)
f(Hz):電源周波数
f2(Hz):滑り周波数

一次電流・二次電流

固定子側を一次、回転子側の二次とする。
ここでは、固定子の磁束の分布は正弦波と仮定する。一次と二次の関係は大まかに以下のとおりである。
一次側(固定子)の電圧に対して位相が90度遅れて励磁電流IM1が流れる。
回転子が存在しない前提でする。
固定子に対して磁束が変化していることになるので、磁束の位相から90度遅れて起電力を誘導する。
毎極の磁束の最大値 φm(Wb) 周波数をf(Hz)とすると、コイル1巻きに誘導する起電力(実効値)は以下のとおりである。
\displaystyle E1c=4.44 \phi m \cdot f
分布巻・短節巻等は電圧が下がるため、巻き線係数を乗じる。
励磁電流により同位相の磁束が発生する。 二次電流(回転子)が存在すると、すべりsに対して、sE2がE1と同相で誘導する。二次負荷電流I2は、sE2とほぼ同相に流れる。 一次負荷電流I1'は、I2と逆相で流れる。 一次巻線に流れる励磁電流IM1と一次負荷電流I1'のベクトル和を一次電流I1と呼ぶ。
トルクは、ほぼ回転子電流の有効成分に比例する、

固定子

環状の鉄心を用いることによりコイルで発生した磁力は、磁気抵抗の少ない鉄心の中に集中するため、鉄心の内側に効率的に作用する。
鉄心の内側にはコイルを収める溝がありこれをスロットと呼ぶ。

モーターの鉄心にはけい素鋼板(鉄にシリコン等を1~3.5%添加)が用いられる。一般的には厚さが、0.35㎜ または0.5mmであるが、鉄損を少なくするために更に薄いものが用いられる場合がある。 軟磁性材料が用いられる。透磁率=μ=B/Hが高い。磁性体は保磁力が小さく透磁率が高いため、磁場を加えることによって磁化されやすく、磁場を取り去ると元に戻りやすい性質を持つ。
うず電流損を小さくするために固有抵抗が高い薄い板を一枚ずつ絶縁して積み重ねる。またヒステリシス損を少なくするためにヒステリシスループの面積の小さい材料が必要である。
鉄心はけい素鋼板を打ち抜いたものを積層する。
単位
磁界:H(A/m)
磁束密度は単位面積あたりの磁束であり単位はテスラである。
磁束密度 B=φ / A
φ:磁束(ウェバー)
A:面積(m2)
透磁率:μ:(H/m N/A^2)
透磁率は真空中の透磁率(μ0=4π×10-7(H/m))に対して磁束がどれくらい磁性材料を通しやすいかを比率で表すものである。鉄は真空中に対して約5000倍の磁束の通しやすさを持っている。このためコイルに鉄心を入れると磁束が集まって強い磁力を得ることができる。
スロットの形状には以下のものがある。

  • 半閉スロット平行歯
  • スロット幅がそこに行くほど広くなる。
    低圧向きでありコイルの素線を1本ずつ細い入り口から落とし込む。
  • 半閉スロット平行歯円形底
  • スロット幅がそこに行くほど広くなる。
    低圧向きでありコイルの素線を1本ずつ細い入り口から落とし込む。
  • 半閉スロット平行スロット
  • スロット幅がそこに行くほど広くなる。
    低圧向きでありコイルの素線を1本ずつ細い入り口から落とし込む。
  • オープンスロット
  • スロット幅が等しい。
    高電圧向きであり、コイルを巻いて絶縁成型してからスロットに入れる。

    分布巻きの分類

    分類

    集中巻 分布巻 単層巻 同心巻 2層巻 重ね巻 波巻

    集中巻(Concentrated Winding)

    1極1相分のコイルが1つのスロットに収めらている巻き方である。
    よく誘導電動機の説明に用いられる6スロットの3相2極が該当する。
    誘導電動機では分布巻が主である。ブラシレスモーターや永久磁石同期モータでは、隣同士のスロットにコイルを収める突極集中巻が採用されることが多い。
    分布巻の場合、多くのスロットをまたぐコイルエンドが大きくなるが、集中巻では多くのスロットをまたがないため、コイルエンドが短くなるメリットがある。

    分布巻(Lap Winding)

    1極1相分のコイルが複数個のスロットに分布して巻線されている巻き方である。
    起磁力が正弦波に近づく。正弦波に近いとトルク変動が低減され騒音・振動が少なくなる。

    単層巻(Single layer winding)

    分布巻のうち1つのスロットに1つのコイルが収められている巻き方である。
    同心巻(Conecentric Winding)
    一般的には、2個以上のコイルを同心上に配置する。各コイルの巻き数や巻線の太さが異なることがある。三相誘導電動機では小容量の三相誘導モーターや特に単層誘導モーターではよく用いられる。 コイルエンドが複雑になる。

    2層巻(Double layer winding)

    分布巻のうち1つのスロットに2つのコイルが収められている巻き方である。
    1個のコイルの両端をそれぞれ上層と下層にすることにより、各コイルを同一寸法に統一することができる。

    重ね巻(Lap Winding)
    1極分に対して集中して各コイルが巻かれている。
    波巻(Wave Winding)
    1極分のコイルが180度離れて巻かれているため、コイルエンドが短くなる。

    巻線係数(Kw)

    分布巻

    三相誘導電動機では一般的に起磁力が正弦波に近くなる、短節巻が用いられています。
    また、短節巻は、導体の長さが短くなり経済的となります。
    正弦波に近づけるために1極1相当たりのスロット数を多くしたりします。
    設計では、集中巻と比較した係数が用いられます。

    分布係数(Kd)

    分布係数は、1極1相にある複数の導体を複数のスロットに分布させたときの起磁力の低下を示す係数である。
    複数の導体が1スロットに収まっている時を1とし分布すると起磁力が階段上になって弱まるため1以下になる。
    ずれた巻線がそれぞれ1スロット分の電気角がずれるためその分弱まることになる。
    下図は毎極毎相スロット数を3とした(Npp=3)時の例である。


    分布巻 基本波起磁力のベクトル表示 ; α ; ; α ; ; ; α ; ; f1 f2 f3 F'=f1+f2+f3
    毎極毎相スロット数をNppとすると分布係数(Kd)は以下の式で求まる。
    \displaystyle Kd=\frac{\sin(N_{pp} \cdot \frac{\tau s}{2})}{N_{pp} \cdot \sin \frac{\tau s}{2} }
    スロットは電気角で示すことから、上式に当てはめて計算すると一般的に下表のようにあらわすことができる。
    集中巻分布巻
    電気角π/3(60度)π/6(30度)π/9(20度)π/12(15度)π/15(12度)π/18(10度)
    毎極毎相スロット数 Npp123456
    分布係数 Kd1.00000.96590.95980.95770.95670.9561
    スロット数
    2極 Npp*3*P61218243054
    4極 Npp*3*P1224364860108
    6極 Npp*3*P1836547290162
    8極 Npp*3*P24487296120144
    10極 Npp*3*P306090120150180

    短節係数(Kp)

    短節巻は、極ピッチ(π)よりコイルピッチ(βπ)が短い巻き線方法である。
    全節巻は、極ピッチ(π)とコイルピッチ(βπ)が同一の巻き方である。
    短節巻により、最大起磁力は低下するが、起磁力が階段上になるため正弦波に近づく。
    短節量 \displaystyle \beta=\frac{コイルピッチ}{極ピッチ}
    \displaystyle Kp=\sin \frac{\beta \pi}{2}
    一般的なケースを計算すると下表のようになる。
    コイルピッチ17 14 11 8 5 7 6
    極ピッチ 18 15 12 9 6 9 9
    短節スロット 1 1 1 1 1 2 3
    β 0.9444 0.9333 0.9167 0.8889 0.8333 0.7778 0.6667
    Kp 0.9962 0.9945 0.9914 0.9848 0.9659 0.9397 0.8660

    全節巻 基本波起磁力のベクトル表示 ; fa fb F=fa+fb π
    短節巻 基本波起磁力のベクトル表示 ; fa fb F" βπ

    同心巻(Conecentric Winding)

    同心巻では全節巻である。
    なお、内側と外側のコイルの巻き数が多い。
    この場合、ベクトルで合成すれば求められる。

    以下に、同心巻で2つのコイルで極が構成されている場合の巻線係数の計算例を示す。
    例)
    固定子スロット数:Ns=24
    極数:P=4
    コイル巻数
    内側:N1=26
    外側:N2=25
    コイル巻位置
    内側:θ1=4.5π/12(rad) (67.5度) 9スロット
    外側:θ2=5.5π/12(rad) (82.5度)11スロット
    \displaystyle Kw=\frac{ N1 \sin \theta 1+ N2 \sin \theta 2}{N1+N2}
    \displaystyle =\frac{ 26 \sin \frac{4.5 \pi}{12}+ 25 \sin \frac{5.5 \pi}{12}}{26+25}=0.957

    回転子

    回転子は、円板や円筒の誘導体でも回転するが、うず電流が周囲に広がり効率が悪くなるため、かご形又は巻き線型が用いられるのが大半である。
    ただし、スマートメーター以前の電力メーターは、円盤が回転する形式の誘導形電力計が広く用いられていた。これは、アラゴの円板の原理の応用である。

    かご形回転子

    ローターバー(棒状)、エンドリング(短絡環 ドーナツ形状)で構成される。
    形状が鳥かご等に似ているため籠形と呼ばれる。
    実際は、かごの中に鉄心が入っており、磁束密度が向上しトルクを増大させている。
    構造が単純であり、丈夫である。
    エンドリングとローターバーはロウ付け又は、ダイカストにより一体で製造する。

    始動方法

    かご型誘導電動機の始動時は、すべりS=1であり、定格電流の5~7倍の電流が流れる。
    小型電動機では電源を直接接続する全電圧始動(直入れ)が用いられるが、大型では始動時の一次電流を抑える必要がある。
    また、電源容量が小さい場合、始動用にインバーターを用いる場合がある。
    全電圧始動
    直入れとも呼ばれ、電源に直接電動機を接続する方式である。
    概ね7.5kW以下の電動機に用いられる。
    Y-⊿始動
    電源と電動機の三相交流の接続方法を始動時は、スター結線で、始動し、その後デルタ結線に切り替える方法である。(結線方法)
    スター結線の場合、デルタ結線に比べて1/3の電流となる。始動トルクも1/3となる。
    切り替えは、電磁接触器を用い、誘導電動機は各相ごとに2本ずつ電線がでている。
    リアクトル始動
    始動時は電源の各相にリアクトル(コイル)を直列に接続し、始動電流を抑える方式である。起動後は、電磁接触器によりリアクトルを短絡させ、直結とする。
    コンドルファ始動
    始動時の電圧を単巻変圧機で抑える方法である。
    インバータ始動
    起動時は数Hzの低い周波数ですべり周波数を抑えて起動する方法である。

    速度制御

    かご型誘導電動機の場合、二次側は短絡状態であり、基本的に一次側の電源周波数と極数で回転数がほぼ固定されるため、インバーターが一般化する前は、極数制御のみであった。
    極数制御(ポールチェンジ)
    固定子巻線を接続を直列から並列に切り替える、又は、それぞれの極数の専用巻線を切り替えることにより誘導電動機の極数を変えて速度制御をする方法である。
    運転速度は、連続ではなく、数段の切り替えになる。
    インバーター制御(VVVF)
    インバーターで電圧及び周波数を制御して駆動する方式である。
    制御方法は、すべり周波数の制御により必要な回転数とトルクを得る方法と、ベクトル制御がある。
    すべり周波数を増やすとトルクが増え、減らすとトルクも減る。
    ベクトル制御は、すべり周波数より高度な制御であり、測定した一次電流を回転磁界を作る励磁電流とトルクを発生される電流が位相差があるため、高速な演算によりリアルタイムにトルク電流を計算し、必要なトルクが得られるように制御する方法である。
    たとえば電車の車輪の空転時のトルクを抑えのに、滑り周波数で0.1~0.3秒かかるものが正弦波の1周期未満でもキャリア周波数の単位で変更可能なため非常に応答性がよい。

    かご型の種類

    スロットの開口はスロットリップルを抑えるためにできだけ狭く製造される。ローターバーは必要な電流で大きさが決まるため、ローターバーの部分より開口部が狭くなる。なお、ダイカストの場合、開口があると溶けたアルミが流出するため、閉スロットを用いることが多い。この場合、磁束が短絡してしまうため、極力ブリッジ部を小さくし、磁気飽和を起こさせている。磁気飽和を起こすと空心と同様となる。表面からはローターバーを目視することができない。

    普通かご形と始動電流を抑えるために形状を工夫した特殊かご形がある。
    誘導電動機は二次側である回転子の電気抵抗を二次抵抗と呼び、二次抵抗が大きいと始動電流が抑えられる。
    始動時は、回転子が停止しており、すべり周波数は最大値である電源と同一の周波数となる。定常時はすべりが数%であり、すべり周波数が低くなる。交流の場合、周波数が高いほど電流が表面に流れる表層効果がありこれを利用すると周波数が高くなるほど抵抗値を大きくできる。表層効果を応用したのが特殊かご型である。
    二次抵抗と始動トルクと電流の関係は巻き線形誘導電動機で後述している。
    a.普通かご型(丸棒)
    b.普通かご型(平角棒)
    c.普通かご型(ダイカスト)
    アルミニウムを溶かして流し込んで生成。銅よりアルミニウムの方が電気抵抗が高いため、断面積を大きくしなければならないが、銅の棒を差し込む場合と異なり、形状が自由に選べる。エンドリングも一体化される。ファンも一体にするのが一般的である。
    d.特殊かご型の深みぞかご型
    始動電流を少なくし、始動トルクを大きくするための形状。
    始動時は、すべりが大きく、二次周波数が高いため、表層効果が顕著に現れ、電流は表面に集中するため、実効抵抗が大きくなり始動トルクが大きくなり、始動電流は小さくなる。
    始動後は、二次周波数が低くなるので電流は一様に分布する。
    e.特殊かご型の二重かご型
    始動電流を少なくし、始動トルクを大きくするための形状。
    始動時は、すべりが大きく、二次周波数が高いため、表層効果が顕著に現れ、電流は表面に集中するため、実効抵抗が大きくなり始動トルクが大きくなり、始動電流は小さくなる。
    始動後は、二次周波数が低くなるので電流は一様に分布する。

    巻線形回転子

    以下の図は、巻線形回転子に始動抵抗器を接続した例である。

     巻線型誘導電動機は回転子に三相の巻線を用いた電動機である。固定子と同様の極数の巻線を用いる。巻線は、Y(スター)結線され、各相にスリップリングが接続され、ブラシにより電動機外部に二次電流を取り出すことができる。
    外部に二次抵抗を接続すると、始動時にトルクを大きくしたり、始動電流を少なくできる。 また、速度制御に用いることもできる。
    ブラシは起動時のみ用い定格回転時は引き上げる方式と、常時用いる方式がある。
    二次抵抗を使用した場合は、二次側の銅損となる。
    現在は、インバータにより回転数を任意に制御可能なため、使用が少なくなっている。
    二次電流を二次抵抗で熱として処理するほかにに、整流して直流電動機を駆動または、インバーター等により電源へ回生することが可能である。

    二次抵抗方式

    始動時は二次抵抗を大きくして始動電流を抑える。また速度制御も可能で、定格の40%程度の速度まで遅くして運転可能である。
    比例推移
    以下のグラフに示すとおり、二次抵抗を倍にすると対応するすべりが倍のところで同トルクになる。トルクが二次抵抗とすべりの比にほぼ比例しており、比例推移という。また、二次抵抗値を大きくすれば始動トルクが大きくなり、しかも始動電流が抑えられる。

    以下のグラフの二次抵抗値の大きさは以下の関係になっています。
    <<<<水色<
    すべりの値がS=1の時、回転子が停止している状態であり始動時である。

    二次励磁方式

    クレーマ方式
    巻線電動機の回転軸に直流電動機を直結する。二次電流を整流して、直流電動機の電機子電流とする。
    直流電動機の界磁電流を制御することにより誘導電動機のトルクの増減をできる。 通常、二次抵抗器では銅損となってしまうが、直流電動機によりトルクとして利用できるため効率が良い。
    回転型セルビウス・M-Gセルビウス方式
    二次電流を整流して直流電動機を駆動し、直流電動機により誘導発電機を駆動し、電源に回生する方式である。
    M-Gとは、直流電動機で誘導発電機を駆動することにより、直流を交流に変換する方式である。
    始動時は二次抵抗を用いる。
    静止セルビウス
    二次電流を整流して、インバーターにより電源側に回生する方式である。
    回転機を使用しないことから静止と呼ばれる。
    超同期セルビウス
    二次電流の回生とともに双方向インバーターにより二次側の巻線を励磁できる方式。
    二次側を励磁することにより、同期速度以上の運転及び、誘導発電機として回生もできる。 一次側と二次側を励磁できるため、二重供給誘導機とも呼ばれる。可変速方式の風力発電、可変速揚水発電機等にもちいられている。

    例えば、一次側が60Hzの電源に接続されている4極で回転子の回転数が1500rpmの時、回転子を10Hzで駆動すると300rpm相当の滑り周波数になり、1次側は60Hzの電気を得ることができる。
    回転子の回転数が変化しても、二次側の周波数を制御すれば、一定の周波数の交流を得られる。

    スロットと極数

    極当たりのスロット数を多くし、短節巻にすると起磁力を正弦波に近づくため、騒音振動やトルク変動が少なくなる。
    以下に三相誘導電動機の2極についてスロット数及び巻形を変えた場合のU相が位相0度の時の起磁力分布とその起磁力をフーリエ変換し高調波成分を図示したグラフを示す。
    極数が多い場合は、スロット数を増やして考えます。例えば4極の場合、スロット数を倍にし、2極をそれぞれ円周方向に左右対称に配置すればよいことになります。
    図中の赤がU相、青がV相、Wが緑で示しています。
    なお、電流と磁界の方向は以下のとおりである。
    電流の向き
     ⊙:画面手前に流れる。磁界は左回り。
     ⊗:画面奥へ流れる。磁界は右回り。
    グラフ中の数字は高調波の倍数を示しています。

    6スロット 2極 3/3 全節巻 単層巻


    12スロット 2極 6/6 全節巻 単層巻


    12スロット 2極 5/6 短節巻 2層巻


    24スロット 2極 24スロット 同心巻


    結線方式

    一般的には、Y(スター:星形)結線が用いられます。
    低圧大電流の電動機ではΔ結線が用いられることがあります。この場合、電流が1/√3となるため電線が細くて済みますが、巻線の長さが長くなります。
    自動車の電動パワーステアリングのモーターは誘導電動機ではありませんが、Δ結線(デルタ)が用いられます。
    Y(スター:星形)結線では電源電圧に第3次高調波は3つの相で打ち消しあって、巻線には現れませんが、Δ結線(デルタ)では各巻線の循環電流になります。
    電動機の電圧は、線間電圧で示されます。
    なお、三相交流の電源の電線の色は、基準によって異なりますのでご注意願います。
    始動時の電流を抑えるために、Y(スター:星形)結線で指導し、ある程度の速度になったところで、Δ結線(デルタ)に切り替える方法があります。