恒星の進化

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概要

 恒星の進化について簡単にまとめてみました。

HR図

 横軸が表面温度、縦軸を光度とし星をプロットしたグラフををHR図という。
 右下から左上の斜め範囲に星が集まっているのがわかる。これらの星は主系列星という。
 右上の領域は、巨大な星なので巨星、左下の領域は白色矮星である。
アンタレス ベテルギウス デネブ リゲル シリウス アルタイル 太陽 スピカ シリウスB プロキオンB アルデバラン アークトゥルス O B A F G K M 10 10 10 1 10 10 6 4 2 -2 -4 30,000 10,000 6,000 3,000 表面温度(K) HR図(Hertzsprung-Russell Diagram) 1000R 100R 10R 1R 0.1R 0.01R 0.001R 光度L

原始星

 分子雲の密度の高いところで、ガス圧より重力が勝ると収縮を始める。収縮を始めると温度が高くなっていく。この段階では核融合ではなく、重力エネルギーの解放により輝いている。

主系列星の誕生

 原始星の中心温度が1000万k以上になると水素原子4個がヘリウム1個の原子核になる、核融合反応が始まる。小さい星(重さが太陽の1.3倍以下)ではP-P反応が優勢であるが、大きな星(重さが太陽の1.3倍以上)ではCNOサイクルが優勢となる。
 P-P反応では水素燃焼は等温コアとなるが、CNOサイクルでは温度依存性が高いので対流コアとなる。
 式のeが電子、γがガンマ線光子、vがニュートリノである。

陽子-陽子連鎖反応P-P反応

P-PI反応

^1 H+^1 H \to ^2_1 H+e^+ +v
\displaystyle ^2_1 H+^1 H \to ^3_2 \to ^3_2 He+ \gamma
\displaystyle ^3_2 He+^3_2 He \to ^4_2 He +^1 H+^1 H

 まとめると
\displaystyle 4^2H \to ^4_2 He+2e~+ 2v

P-PII反応

\displaystyle ^3_2 He+^4_2 He \to ^7_4 Be+\gamma
\displaystyle ^7_4 Be+e^- \to ^7_3Li+v
\displaystyle ^7_3 Li+^1 He \to ^4_2 He+^4_2 He

P-PIII反応

\displaystyle ^3_2 He+^4_2 He \to ^7_4 Be+\gamma
\displaystyle ^7_4 Be+^1 H- \to ^8_5 B+\gamma
\displaystyle ^8_5 B \to ^8_4 Be +v
\displaystyle ^8_4 Be \leftrightarrow ^4_2 He+^4_2 He

CNOサイクル

CNO-1サイクル

\displaystyle ^{12}_6 C+^1 H \to ^{13}_7 N+\gamma
\displaystyle ^{13}_7 N \to ^{13}_6 C +e^+ +v
\displaystyle ^{13}_6 C +^1H \to ^{14}_7 N+\gamma
\displaystyle ^{14}_7 N+^1H \to ^{15}_8 O +\gamma
\displaystyle ^{15}_8 O \to ^{15}_7 N +e^++ v
\displaystyle ^{15}_7 N +^1 H \to ^{12}_6 C+ ^4_2 He

 まとめると
\displaystyle 4 ^1 H \to ^4_2 He+2e^+ + 2v

CNO-2(バイ)サイクル

\displaystyle ^{15}_7 N+^1 H \to ^{16}_8 O+\gamma
\displaystyle ^{16}_8 O+^1 H \to ^{17}_9 F+\gamma
\displaystyle ^{17}_9 F \to ^{17}_8 O +e^+ +v
\displaystyle ^{17}_8 O +^1 H \to ^{14}_7 N +^4_2 He
\displaystyle ^{14}_7 N +^1 H \to ^{15}_8 O + \gamma
\displaystyle ^{15}_8 O \to ^{15}_7 N + e^+ +v

 まとめると
\displaystyle 4 ^1 H \to ^4_2 He+2e^+ + 2v

CNO-3(トリ)サイクル

\displaystyle ^{17}_8 O+^1 H \to ^{18}_9 F+\gamma
\displaystyle ^{18}_9 F \to ^{18}_8 O+v
\displaystyle ^{18}_8 O+^1 H \to ^{15}_7 N+^4_2 He
\displaystyle ^{15}_7 N+^1 H \to ^{16}_8 O+\gamma
\displaystyle ^{16}_8 O+^1 H \to ^{17}_7 F +\gamma
\displaystyle ^{17}_7 F \to ^{17}O+e^+ +v

軽い星の主系列以降の進化

赤色巨星 原始星 主系列星 準巨星 水平分枝星 漸近分枝星 白色矮星 ヘリウムフラッシュ 惑星状星雲 表面温度 光度 ←高 大→ 軽い星の進化 中心で水素枯渇 林トラック
 軽い星の進化をHR図に示したのが上図である。

赤色巨星

 中心で核融合により水素がヘリウムに変換されます。
 だんだん中心部にヘリウムたまり等温ヘリウムコアが成長していきます。
 P-P反応の星では、水素燃焼に伴いスムーズにヘリウムコアが作成され、燃焼殻がスムーズに外側へ移動していくが、CNOサイクルでは温度勾配が大きいため中心部の水素が枯渇し対流がなくなると温度が低くなり一度星全体が収縮し星全体の温度が上昇し水素殻燃焼が活発化し星の収縮が止まります。
 ヘリウムコアの重量が理想気体の場合、星の重量の10%を超えた場合、縮退ガスの場合は13%を超えた時点でシェーンベルグ-チャンドラセカール限界に達しヘリウムコアは収縮します。
 この限界値は、燃焼していないヘリウムコアの成長限界を示します。
 この時収縮により重力エネルギーが解放され、ヘリウムコアは加熱されます。
 ヘリウムコアの収縮により温度が上昇すると水素燃焼殻が活発となり、熱を逃がすために外層が膨らみ赤色巨星となります。太陽質量の0.47倍以上の星ではヘリウム燃焼を起こすことができます。

ヘリウムフラッシュ

 軽い星の方が密度が高いので太陽質量の1.5倍未満の場合、ヘリウムコアが縮退してしまいます。 縮退すると温度が上がっても密度が変わらない状態になります。
 この時、中心温度がヘリウム燃焼を起こす温度になっていると、通常であれば核融合が激しくなると温度が上がり膨張して密度が下がって核融合が抑えられるので安定して燃焼しますが、縮退しているときはヘリウムに火がつくと温度が上がりさらに核融合が激しくなり一気に燃焼するヘリウムフラッシュという現象が発生して縮退がとけるまで一気に燃えます。ヘリウムフラッシュは外層で吸収されてしまうので外から見ることはできません。

水平分枝星

 ヘリウム燃焼が盛んになるとコアが膨張し密度が下がるので温度が下がり核融合が収まるので安定してヘリウム燃焼をすることができます。ヘリウムのことをアルファといい、以下の式で3個のヘリウムで1個の炭素へ核融合しているのでトリプルアルファ反応といいます。HR図上では水平の動きとなります。なお水素もヘリウムの外側で燃焼しています。

3α反応(トリプルアルファ)

\displaystyle ^4_2 He+^4_2 He \leftrightarrow ^8_4 Be
\displaystyle ^8_4 Be+^4_2 He \to ^{12}_6 C+\gamma
\displaystyle ^{12}_6 C+^4_2 He \to ^{16}_8 O+\gamma

漸近分枝星

 赤色巨星と同様に、中心に炭素と酸素のコアが発生します。
 ヘリウムが燃焼すると熱で膨張します。ヘリウムの温度依存性が大きく燃焼している部分の層は薄い状態であり膨張すると水素及びヘリウム層の燃焼が不活性化し、収縮すると水素燃焼が発生しヘリウムがたまるとヘリウム燃焼が発生します。
 このように膨張と収縮を繰り返すので熱パルスと呼びます。
 軽い星の場合、中心の密度が高いのでやがて中心が縮退し炭素と酸素の核融合を起こすことができません。

惑星状星雲

 太陽質量の8倍以下の場合、赤色巨星時に膨張した外層は重力を振り切ってコアが放出した状態となります。放出した星雲上のガスが中心星に照らされて光ります。

白色矮星

 太陽質量の8倍以下の場合、残った外層がだんだん収縮し重力エネルギーを開放していきます。縮退状態になると、非常に重い白色矮星と呼ばれる電子の縮退圧により星の重量を支えた状態になります。質量が最大で太陽の1.4倍程度で大きさが地球程度の非常に密度が高い星となります。核融合は起こらず、重力収縮もしないので冷えていく一方です。
 軽い星ではヘリウムのみ、中ぐらいの星ではヘリウムと炭素・酸素の2層の白色矮星になります。

重い星の主系列以降の進化

主系列星 赤色巨星 水平分枝星 漸近分枝星 超新星爆発 He燃焼開始 重い星の進化 表面温度 光度 ←高 大→

 重い星の進化をHR図に示したのが上図である。
 赤色巨星までは軽い星とほぼ同様な進化をします。

水平分枝星

 重い星では縮退していないので、理想気体の状態であり、ヘリウム燃焼が盛んになると膨張し温度が下がり燃焼が収まるので安定して燃焼をすることができます。

漸近分枝星

 赤色巨星と同様に、中心に炭素と酸素のコアが発生し中心が収縮していき、温度が上がります。一方コア以外は膨張し赤色巨星になるので漸近分枝星といいます。
 シェーンベルグチャンドラセカールの限界と同じようにコアの重量が限界を超えてコアが収縮し重力エネルギーの解放により温度が上がると新たな核融合が起こります。
 次々とこのような反応が起こり中心部の温度が十分に上がれば最終的にFeまで作成されます。この時、恒星の断面は下図の様な玉ねぎのような構造となります。下図は代表的な元素のみ記載しています。
 縮退してしまうと重力収縮して温度が上昇しなくなるので新しい核融合は起こらなくなりますが重い星では縮退していないのでこのように次々と新しい核融合を起こすことができます。

重い星の玉ねぎ構造 Fe Si O Mg Si Ne Mg O O C He H Si O Ne C He H燃焼

炭素燃焼

太陽質量の8倍以上の星
\displaystyle ^{12}_{6}C+^{12}_{6}C+ \to ,^{20}_{10}Ne+^4_2He
\displaystyle ^{12}_{6}C+^{12}_{6}C+ \to ,^{23}_{11}Na+p
\displaystyle ^{12}_{6}C+^{12}_{6}C+ \to ,^{24}_{12}Mg+\gamma

ネオン燃焼

太陽質量の10倍以上の星
\displaystyle ^{20}_{10}Ne+\gamma \to ^{16}_{8}O+^4_2He
\displaystyle ^{20}_{10}Ne+^4_2He \to ^{24}_{12}Mg+\gamma
\displaystyle ^{24}_{12}Mg+^4_2He \to ^{28}_{14}Si+\gamma

酸素燃焼

\displaystyle ^{16}_{8}O+^{16}_{8}O \to ^{28}_{14}Si+^4_2He
\displaystyle ^{16}_{8}O+^{16}_{8}O \to ^{31}_{15}P+p
\displaystyle ^{16}_{8}O+^{16}_{8}O \to ^{31}_{16}S+\gamma

シリコン燃焼

\displaystyle ^{32}_{16}S,^{36}_{18}Ar,^{40}_{20}Ca,^{44}_{22}Ti,^{48}_{24}Cr,^{52}_{26}Fe,^{56}_{28}Ni

56Ni(陽子は28個)は不安定なのでβ+崩壊を起こしてコバルト(陽子は27個)になりコバルトもβ+崩壊し56Fe(陽子は26個)になる。

超新星爆発

 連星ではなく単独の星の超新星の場合、Ⅱ型超新星と呼ばれる。
 太陽質量の10倍以上の星の場合、鉄まで核融合で合成されます。鉄以降は核融合しないので核は重力エネルギーを解放しながら温度を上げていき、鉄の光分解(鉄の吸熱反応)が発生し、重量に対抗して膨張しようとする力を失い、重力崩壊でつぶれる。一方外側はコアが収縮するので外側も中心に向かって落ち込むが鉄コアでバウンドして放出される。コアが太陽質量の2~3倍程度の場合、中性子星として残るが、超える場合はブラックホールとなる。

鉄の光分解

熱を吸収するので吸熱反応と呼ばれる。γはガンマ線光子、nは中性子
\displaystyle ^{56}_{26}Fe+\gamma \to 13^4_2He+4n

中性子星

 大きな星が超新星爆発した後に残る。
 陽子と電子が結合し原子が中性子化する。
 白色矮星よりも高密度となる。太陽程度の質量が直径20km程度の大きさとなる。
 中性子星の質量の限界は、トルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界であり超えた場合ブラックホールとなる。