0.005%を目標とする。

発振部

低歪が期待できるクワドラチャ発振器を使用する。さらに低歪にするためにBPFを使用する。
発振周波数は商用電源の影響を受けないように50Hz及び60Hzの倍数にならないようにする。
部品は、下記のとおりである。
抵抗:アルファ 0.1% 0±5ppm/℃
コンデンサ:双信 スチロール qs 0.5% -180ppm±30ppmを使用。
使用温度範囲は0~50℃とする。

クワドラチャ発振器


無調整とする。
発振周波数は、C=C1=C2=C3=13000pF R3=R4=12k より 1/(2πRC)=1,020.22Hz である。
発振周波数のずれは、
R=0.1+5ppm/℃*25=0.1125%
コンデンサは、0.5+210ppm/℃*25=1.025%
より最小で fmin=f*(1-0.001125)*(1-0.01025)=1008.627Hz
最大で fmax=f*(1+0.001125)*(1+0.01025)=1031.837Hz
 その後、ノッチフィルタの検討をしていたところ、基本波除去率が確保できず歪の少ない時の計測誤差が大きくなることが判明したので、コンデンサの容量値を選別することにより、発振周波数のずれを半分に減らすことにした。そのことによりノッチフィルタの調整範囲を狭くすることができ、除去率が1.55倍に改善される。さらに発振部の周波数を微調整できるように、12kを10k+1.8k+500Ωの可変抵抗に分割する。

BPF

アクティブ型とするが、数Hzずれると帯域が狭いため基本波が減衰してしまう。よって、中心周波数を微調整できるようにする。調整範囲は、±30Hzとする。
C=C1=C2=13000pF
f=1020.22Hz
Q=8程度
A=1
R3=Q/(π*f*C)=8/(π*1020.22*13000pF)=192kHz=200K
R1=R3/(2A)=200k/(2*1)=100k
R2'=R3/{2(Q^2-A)}=200k/{2*(8^2-1)}=760
中心周波数の調整にはR2を調整する。
f=1/(2π)/sqrt{(R1+R2)/(C1*C2*R1*R2'*R3)} の計算式より
R1とR2の並列合成値にR3を掛けて開平するとR2'となる。
周波数を(1020.22-30)/1020.22=0.97倍にするには R1とR2'の合成値をを0.94倍にする必要がある。
合成値は、(R1*R2')/(R1+R2')=100k*760/(100k+760)=754
必要値は 754*0.94なので708.76 よって、R2'は1/(1/708.76-1/100k)=713Ωになる。よってR2'の可変範囲は、713~760+(760-713)=807までとする。中心値は760である。
713に近い値として5.6kと820の並列値を採用する。調整範囲は807-713=94Ωである。可変抵抗は100Ωとする。
970Hz~1.039KHzが可変範囲である。


可変抵抗の調整範囲を少なくし温度係数を小さくする方法

可変抵抗と直列に固定抵抗を接続するか可変抵抗と並列に固定抵抗を接続する方法および併用が考えられる。
直列にする場合は、可変抵抗に対して固定抵抗を大きくすれば温度係数は固定抵抗に近づく。
並列にする場合は、可変抵抗に対して固定抵抗を小さくすれば温度係数は固定抵抗に近づく。
並列の場合、可変抵抗が大きいほど回転角に対して合成値の変化が直線的でなくなる。よって、実質的な調整範囲は、狭い角度になる。よって、極力固定抵抗を大きくして直列に可変抵抗をつなぐほうが調整が楽である。


ノッチフィルタ

仕様

低歪
低ノイズ
歪成分に対しては10倍の利得を得る。
100kHz程度まで周波数特性はフラット。(1kHz以外の周波数で使う場合を想定)
A=(R1+R2)/R1 R2を大きくすると基本波の除去率は上がるが、2次高調波の振幅も下がる。
R2を小さくすると基本波の除去率は下がるが、2次高調波の振幅は入力信号に近づく。

無調整とした場合の特性をシミュレーション

R=R2=R3=2R5
C=C3=C4=0.5C1
f=1/(2πRC)
A=(R10+R11+R12+R13)/(R12+R13) 基本以外の利得

使用温度範囲は0~50℃とする。
抵抗は、0.1%+5ppm/℃*25=0.1125%
コンデンサは、0.5+210ppm/℃*25=1.025%
R=12k,C=13000pF
f=1/(2πRC)=1,020.22Hz

1,020.22Hzで最悪449.952mVであった。 1/22.22
一番、1.0209KHz 68.053mV 1/146.9
最小 1.0163k 90.314mV 1/110.72
最大 1.0233k 124.763mV 1/80.152
最大ノッチ 1.0186k 261.172mV 38.29(発振側の周波数をずらして調整する場合)
仮に最悪ケースで0.001を実現するには log 1/(0.001/100)/log(22.22)=3.71 4段必要
最大ノッチで 3.16 4段必要 ただし個別に中心周波数を調整するのが前提

中心周波数を微調整した場合


部品の計時変化を見込むとさらにずれる可能性があるため、可変抵抗で微調整できるにする。利得については無調整とした。
微調整範囲は、30Hz程度とする。
微調整は抵抗の一部を可変抵抗に置き換える。なお、可変抵抗の温度係数を100ppm/℃と見込むとアルファの20倍悪いことになるので、極力固定抵抗と並列なり直列にして可変範囲を少なくして合成温度係数を減らす。調整範囲は12k*30Hz/1kHz=360Ω以上とする。可変抵抗は500Ω以上のものを使用し、中心付近で1.022kHzとする。入手できそうなものから4種類を検討する。
なお、直列に抵抗を接続する場合はそれぞれのΣ温度係数*抵抗値/(Σ抵抗値)となり温度係数が悪いものに大きな抵抗は使えない。並列にする場合は、逆で低い抵抗ほど温度係数が効いてきます。したがって、極力固定抵抗で大きな値としておき、可変部分は小さな固定抵抗と並列に接続するのが有利となります。しかし並列接続は可変特性が直線とならないので用途によっては調整しづらくなります。
固定抵抗部分の最大値は、12k-360/2=11.82kである。近い値の組み合わせは

10k + 1.8k+500(VR) VR=200
5k+0.9k+200(VR) VR=100

許容差・計時変化は測定前に可変抵抗調整することにでキャンセルできると仮定して、中心周波数を1.0222kHzに設定して温度係数を各部品の温度差が±5℃と仮定してシミュレーションをしてみる。VRによる可変範囲が、1.006~1.03kHzであり、ぎりぎり発振器の周波数のばらつきに対応できそうである。
R=5ppm/℃*5=0.0125%
C=-210ppm/℃*5=0.105%
VR=100ppm/℃*5=0.05%



最悪で 213.42mV 1/46.9 log 1/(0.001/100)/log(46.9)=2.99 3段
その後、もっと除去率がほしくなり、周波数のばらつきをOSCの部品選別で半減させた場合、72.99分の1に除去することができる。-37.27dB*3=82.81dB

歪成分増幅部

A1=(R1+R2)/R2
A2=(R3+R4)/R3
A=A*A2

0.001% (1/100000)なので 仮に2V入力に対して20μVである。RMS-DC変換ICの最大入力値が200mVで0.01%を最小レンジとしたばあい200mV/200μV=1000となる。OPアンプ1段で1000倍を利得を広帯域にわたって得られないので2段とする。前段に大きな利得を設定する。入手可能な抵抗の組み合わせより

39k+1k 24k+1k =40*25=1000とする。

RMS-DC変換

入手可能な製品でAD536とAD736のうち精度が良いAD536を選択した。(値段も高い)
入出力特性は たとえば1Vrmsを入力した場合1V DCが出力される。100mVrms~1Vrmsの範囲の入力であれば100kHz以上までフラットな周波数特性となる。ただし1Vrms程度ないと100kHzで1%の精度は確保されない。よって、1~5Vrmsを設計入力と設定する。
歪率測定部のブロック図を下図に示す。

OPアンプの出力が5Vrmsで最小歪であると仮定した場合、各レンジの歪率と電圧の関係を下表に示す。
下表により0.005%の歪率をもつ信号を入力したときときメーター入力に基本波成分が50%も含まれており、歪の大小はわかるが、測定値としてはあまり使い物にならないような気がする。精度を某メーカと同等とすると5%程度であり、電流計の指示誤差を無視して基本波が5%混入しても良いと仮定すると0.05%までが値として使えそうな値である。それ以下は歪の大小を論ずることができるが、他の機器との比較には用いることはできない。これ以上高性能にするには、発振部の周波数ずれをさらに狭めてノッチフィルタの調整範囲を狭めると、ノッチフィルタ1段あたり90.9分の1まで除去できるので、0.0027%まで測定可能となる。いずれにしても発振部の部品の選別と微調整回路が必要となる。

発振部のコンデンサと抵抗を選別し、発振周波数のずれを0.5%程度とした場合。

  A B C D E ATT F G H 基本波含有率
基本波(mVrms) 0.5 5 0.685 0.094 0.013 0.001 0.000129      
歪成分(mVrms) 0.5 5 50 500 5000 0.001 5 200 5000 0.000003
歪率 50 50                
基本波(mVrms) 9.5 95 13.015 1.783 0.244 0.001 0.000244      
歪成分(mVrms) 0.5 5 50 500 5000 0.001 5 200 5000 0.000049
歪率 5 5                
基本波(mVrms) 99.5 995 136.32 18.677 2.559 0.001 0.002559      
歪成分(mVrms) 0.5 5 50 500 5000 0.001 5 200 5000 0.000512
歪率 0.5 0.5                
基本波(mVrms) 999.5 9995 1369.366 187.61 25.704 0.001 0.025704      
歪成分(mVrms) 0.5 5 50 500 5000 0.001 5 200 5000 0.005141
歪率 0.05 0.05                
基本波(mVrms) 99.995 999.95 136.998 18.769 2.572 0.1 0.257151      
歪成分(mVrms) 0.005 0.05 0.5 5 50 0.1 5 200 5000 0.05144
歪率 0.005 0.005                
基本波(mVrms) 100 999.995 137.004 18.77 2.572 1 2.571626      
歪成分(mVrms) 0.001 0.005 0.05 0.5 5 1 5 200 5000 0.5144
歪率 0.0005 0.0005                

最終的な仕様

歪率測定

測定レンジ 0.0027~50%  メーターの指示誤差を無視した場合5%程度の確度(雑音・歪率計自体の歪率は実測してみないと確定できない。) CLASS 1.5のメータを使用した場合 7%程度の確度となる。歪が多いほど、確度はあがり最大でメーターの指示誤差程度1.5%程度となる。

電圧計

VRを最大にした状態で、500μV/FS,5mV/FS,50mV/FSとなる。表示は真の実効値となる。ただしクレストファクタが大きくなると指示値は下がる(CF=11で-3%)
周波数特性は、メータのFSに対して2%以上の表示なら、高域は100kHz以上までフラット、低域は10Hzがカットオフ周波数。

電源

3端子レギュレータをメインに使う。
トランスの温度上昇や整流ダイオード・レギュレータの温度上昇によりRCに温度ドリフトが生じないように極力発熱させないようにする。(恒温槽的な逆の発想もある)リップル電圧を0.5V程度とすると、JRCのデーターシートよりリップル抑圧度60dB、雑音90μV(10~100kHz)である。レギュレータ出力で0.5mVになる。発振部にはさらに低ノイズとするためLC LPFを設ける。

全回路図

all_cir.pdf A4横

コストパフォーマンス

  高価なCR類を使用したため、CR・IC類だけでも5万円程度になる。あまり頻繁に調整したくなかったので、精度・温度係数の良い部品を使用し高価になっている。安くするためには、1%程度の精度で温度係数が良いものを複数購入し値を選別し、調整範囲を広げる必要がある。調整等は煩雑になる。いずれにしても部品の精度と温度計数・経時変化との戦いになる。温度計数等が不明な製品が多いので、なかなか取り掛かれないところである。もう少し安い値段で、中古で点検校正済みの全自動ひずみ率計と発振器がセットで同額程度購入できる。もう少し金を払うと中古のオーディオアナライザが買えそうである。機能を考えると中古品より自動調整分が劣るというところであろうか。
  ノッチ部をTwinTからオシレータに使用したBPFと引き算回路で構成できないか考えている。可変抵抗で中心周波数が微調整できしかも片側がGNDにおちているのでFETかフォトカプラーで周波数を調整できるようにする。FETかフォトカプラーはBPFの入力と出力を位相比較器で比較し(この手のフィルタは中心周波数からずれると急激に位相が変化する)その出力を平滑し、周波数の変動に自動に追準できないか考えている。ロック時にはLEDが点灯するようにしたい。自動追準なしでもCR類が少なくてすむので有利と思われる。ただ位相比較器等付加回路があるので2段程度で目的の特性が得られるとありがたい。3万円程度で実現できたら、製作したいと思う。