山本ワールド
マルチアンプの改良(工事中)
概要
6畳程度の一人暮らしの集合住宅向け小出力で音のよさそうなトランジスタで構成したアンプを 15 年ほど前に構築した。3年ほど前にマルチアンプ化したが、まもなく現在地に引越しをしその後押し入れで眠ったままであった。FMチューナの中古を最近購入したのでNHK FMのバロックやクラシックを聞きたくなり、アンプを取り出した。音を聞くと、ハム音がしたり、高域が少しきついような気がした。よって、3度目の改良を施すこととした。回路は2段差動(カスコード付)+カレントミラー+2段コンプリメンタリエミッタフォロワである。
電源部(2008/10/01)
アースの処理は、アースラインの変更を参照。
アンプの接続図(右左 同一回路)(2008/10/01)
1ch分の配線図(右左、Low/hi 同一回路)(2008/10/01)
アースラインの変更(2008/9/30)
旧
旧アースラインは下図のとおりである。
基本的には1点アースであるが、整流部の基板内が1点アースとなっていない。整流部の各部品間のアースは基板内でまとめて、シャーシに1本で落としている。基板内の部品間のアースラインは最長で4㎝程度である。意外とありがちな配線だと思う。シャーシアースポイントとダイオードのGND部の電圧をオシロで見ると1mVp-p程度、ダイオードのOn/Offにより方形波のような波形が観測された。2㎝程度しか離れていない電解コンデンサのGNDとダイオードのGND間でも同様な電圧が観測される。
変更後
セオリどおりの1点アースに変更した。下図参照。整流部の各アースもシャーシへ別々に落としている。最長で10㎝程度になるが、この方がアンプ出力に現れるハム成分は少なくなった。
アース処理の変更に伴う残留雑音電圧の変化は下記のとおりである。
旧 320μVrms
出力段用電源を1点アースに変更 120μVrms
電圧増幅段用電源も1点アースに変更 70μVrms
ちなみに出力段用電源のリップルが80mVp-p程度、電圧段用電源のリップルが420mVp-p程度である。
配線の長さはかなり長くなったが、1点アースの優位性が確認できた。変更後に残留雑音成分をオシロで観測した限りでは、ハム成分は認められない。電源トランスをアンプから5㎝ほど離してみたが、特に残留雑音に変化は見られなかった。今後新しいケースに収めるときは、トランスと整流部のレイアウトを変更し、配線長についても改良を図りたい。
アンプの特性を実測したところ、下記のとおりである。
最大出力電圧 6Vp(8Ω負荷) 1ch動作時
利得 20.8dB(11倍)
周波数特性 0~320kHz(0~-3dB)
残留雑音 70μVrms(8Ω負荷 入力は短絡 10~500kHz(0~-3dB)の電子電圧計で測定)
SN比 95.7dB(最大出力時)
クロストローク 74.6dB(最大出力時)
スルーレート 13.64V/μs(計算値)
終段のトランジスタの変更(2008/9/10)
2SD669/2SB648または互換品を使っていたはずだが、なぜか外観がそっくりの2SD668/2SB648が使われていた。コレクタ電流の最大定格が50mAなので、ちょっと音量を上げれば完全に規格オーバーであった。購入時に2SD669/2SB648を買うつもりだったが、製造中止で在庫がなく、似たような型番を買った記憶が読みがえっだ。2SD669/2SB648はパワー段にVCE(sat)が高いため6V程度でパワー段に使うと2Vp程度の出力しか取れない。手元にチョッパの試作用に2SC4881/2SA1931が手元にあったので、これを流用した。VCE(sat)が小さいので6Vの電源で2W(8Ω負荷)\の出力が得られた。
10kHz方形波応答により位相補正容量の変更
10kHz方形波発振器の製作
ロジックICによる10KHzの方形波発振器を製作したが、アンバッファタイプの74HCU04が手元になく動作を確認することができなかった。手持ちのタイマーIC 555を使い、デューティ比が50%となるように、放電用の抵抗にダイオード1S1588を並列に接続した。555の出力に直流カット用のコンデンサとレベル調整用の半固定抵抗を接続した。オシロスコープで出力波形を観測するとLowからHiになるとき少しひげが出ていたがとりあえずは使えそうである。
動作点等の計算
出力段(2SC4881/2SA1931)
IC-VBE特性が直線になっているところより等価エミッタ抵抗は約0.1Ωである。黒田氏の著書によるとAB級の場合、クロスオーバー歪を少なくするには、小電流のgm1と大電流のgm2の合成値(gm1+gm2)がA級の範囲で変化しないこととなる。したがって、もっとも少なくなるのは、、小電流のgm=40*IC と大電流のgm=1/REが等しくなる電流値をアイドル電流とすればよい。よって、1/RE=40*ICが得られ、IC=1/(40*RE)/2が最適なアイドル電流となる。計算値は、IC=1/(40*0.1*2)=0.125Aとなる。実際に試すと20℃/W程度の放熱板を使うとドリフトが発生するため、50mA程度に抑えた。
電源は、ステレオアンプのものをとりあえず流用するので、6Vである。コレクタ損失PC=VCC*IC+VCC^2/RL/2/5なので、PC=6*0.05+6*6/8/2/5=0.75Wになる。放熱板との接触部の熱抵抗を無視すると0.75W*20℃/W=14℃の温度上昇となる。
最大VCEは2VCCよい12V(VCEO=50V)
最大コレクタ電流は、ICmax=IC+VCC/RL=0.05+6/8=0.8A(IC=5A データーシートより1A程度までのhfeは直線性が良い)
最大コレクタ損失は、最大周囲温度を100℃と見込むと (150-50)/0.75=66.66℃/W 放熱板がないとき(150-25)/2=62.5℃/W ほとんど余裕がないので、放熱板が20℃/Wを接続する。残り66.66-20=46.66℃/W であり、無限大放熱板を接続した場合(150-25)/20=6.25℃/Wなので、余裕で使える。
2SC4881のデーターシートより
hfe=210(100~320),Cob=45pF,ft=100MHz
2SA1931のデーターシートより
hfe=200(100~300),Cob=100pF,ft=60MHz
A級領域では2つのトランジスタが並列に接続されると近似されるので
hfe'=(210+200)/2=205
rπ'=hfe'/gm=205*2/(40*0.05*2)=103Ω
hfeのβ遮断周波数は、(100MHz+60MHz)/2/205=390kHz
Cbe'は1/(2π*rπ*f)=1/(2π*103*390k)*2=7924pFである。
av4=gmRL/(1+gmRL)=(2*40*0.05*8)/(1+2*40*0.05*8)=0.970
Zin4=2rπ'+hfe'RL=2*103+205*8=1046Ω
最大ベース電流はIC-VBE特性よりIB=10mAと見込む。
入力容量は Cin=Cob+Cob+Cbe(1-Av)=45pF+100pF+7024pF*(1-0.970)=211pF
ドライバ段(2SD756A/2SB716A)
IC=1.2/330=3.64mA
2SD756Aのデーターシートより
hfe=375(250~500),Cob=2pF,ft=300MHz
2SB718Aのデーターシートより
hfe=375(250~500),Cob=2.5pF,ft=100MHz
A級領域では2つのトランジスタが並列に接続されると近似されるので
hfe'=375
rπ'=hfe'/gm=375*2/(40*0.00364*2)=2576Ω
hfeのβ遮断周波数は、(300MHz+100MHz)/2/375=533kHz
Cbe'は1/(2π*rπ*f)=1/(2π*2576*533k)*2=116pFである。
av3=gmRL/(1+gmRL)=(2*40*0.00364*1046)/(1+2*40*0.00364*1046)=0.997
Zin3=2rπ'+hfe'RL=2*2576+375*1046=397kΩ
Zo3=(RS+rπ')/hfe'=(4700+2576)/375=19.4
ICmax=IC+IB=3.64mA+10mA=13.64mA(IC=50mA 少しhfeの直線性が悪い領域に入る実質的にはVCE(sat)で制限を受ける。)
2SD756A/2SB716A(A級領域 約7mA以上ではB級となり負荷線の傾きが倍になるので注意 | |
入力容量は Cin=Cob+Cob+Cbe(1-Av)=2pF+2.5pF+116pF*(1-0.997)=0.36pF
電流が多い領域では、VCE(sat)が大きくなり出力段をフルスイングできないため、電源は電圧増幅段からとって改善する。(20V)
最大VCEは2VCCよい40V(VCEO=140V)
最大コレクタ電流は、ICmax=13.64mA(IC=50mA)
最大コレクタ損失は、20V*3.64mA+20V*10mA/5=0.1128W(PC=0.3W オーバードライブ時想定) (150-25)/0.3=417℃/W 周囲温度は150-417*0.1128=103℃まで使用可能。
2段エミッタフォロワの安定性
ドライバ段の出力インピーダンスは、高域でhfeが下がることからL性(Rs/hfe)、出力段の入力インピーダンスはC性(RL*hfe あるいはCobなど)となる。通常は、LC回路にロスがあるので発振に至ることはないが、ここに負性抵抗が発生するとロスを補ってしまうので発振してしまう。出力段の負荷にCを接続するとコルピッツ発振回路に似てくる。、
2段目
差動部
ベース接地が接続されるため、負荷は低インピーダンスでありVCEは、ほぼ変動しない。
カスコード接続することにより、カレントミラー負荷としてもVCEが一定となりドリフトが減る。直線性が良くなる。またCobの変化範囲が激減するため、歪が少なくなる。ミラー効果がなくなるなどの利点がある。ミラー効果については、位相補正に使用するため、一概に利点とはならないが。
VCE=VB-VE=5.6-(5.6-0.6)/4700/2*3300-0.6=3.24V
IC=(VB-VBE)={(5.6-0.6)/4700/2*3300-0.6}/150/2=3.85mA
2SB718Aのデーターシートより
hfe=375(250~500),Cob=3pF,ft=100MHz
rπ=hfe/gm=375*(40*3.85mA)=2419Ω
hfeのβ遮断周波数は、100MHz/375=266kHz
Cbeは1/(2π*rπ*f)=1/(2π*2419*266k)*2=247pFである。
AV2=2gmRL=2*40*3.852e-3*4700=724
カスコード部
VCE1=20-5.6+0.6=15V Cob=2pF
VCE2=20-5.6+0.6+20-0.6-3.85mA*100Ω=34V
IC=3.85mA
負荷は、カレントミラーの出力側は負荷抵抗(4.7k)の倍、カレントミラーの入力側はダイオード接続されたトランジスタなので低インピーダンスである。
赤が出力側の負荷線、青が入力側の負荷線である。
差動入力に対して差動出力は実測で2倍であった。
カレントミラー
VCE3=20-3.85mA*100Ω=19.6V
VCE4=0.6V
IC=3.85mA
2SD756Aのデーターシートより
hfe=375(250~500),Cob=1.5pF,ft=300MHz
rπ=hfe/gm=375*(40*3.85mA)=2419Ω
hfeのβ遮断周波数は、300MHz/375=800kHz
Cbeは1/(2π*rπ*f)=1/(2π*2419*800k)*2=82pFである。
2段目の出力電流は負荷抵抗に対して -3.852mA ~ +1.5mA である。負荷抵抗が4.7kΩと重いため、1.5mA*4.7kΩ*2=14Vpの出力しか出ない。出力を上げるには、電圧段の電圧を上げるしかない。
初段
差動部
カスコード FET 差動アンプでソースには定電流回路を使用します。
カスコードを使用することによりVDSがほぼ一定となりミラー効果が抑制できること(ほとんど利得はないのであまり影響はないが)、高い電源電圧を使用する場合、ゲート電流を抑制できること。直線性が良くなることがあげられます。
定電流回路を使用することにより電源電圧の変動等の影響を受けにくくなります。
定電流回路はトランジスタの VBE 温度特性と逆の特性をもつ 5.6V のツェナダイオードを使用します。
実際の回路の測定結果より、ID=0.504mA VGS=-1.228VよりVGS-IDグラフより推定するとIDSS=3.5mA Vp=-1.85V
動作電流は、ID=(5.6-0.6)/(2*4700)=0.532mAとなります。
gm=(2IDSS)/(-VP)*√(ID/IDSS)=(2*3.5mA/1.85)*√(0.532mA/3.5mA)=1.48mS
負荷抵抗は、2段目の動作点を決めるため、電圧降下を1V以上、また初段に利得をもたせることより3.3kΩとした。
規格表より Cis=8.2pF Crs=2.6pF
Av1=gmRL/2=1.48mS*(3300 // 2419)/2=1.03
カスコード部
VCE=20-3.3k*0.504mA-5.6+0.6=13.3V
IC=0.532mA
Cob=1.5pF
周波数特性(位相補正前)
初段と2段目の間に発生するポール
R=3300 // 2419=1396
C=Cob+Cbe+Cob=1.5pF+247pF+3pF=252pF
fc1=1/(2πRC)=1/(2π*1396*252pF)=452kHz
2段エミッタフォロワの周波数特性
1段エミッタフォロワ
エミッタフォロワはコルピッツ発振回路に類似しており、出力側が容量性負荷で入力側に寄生インダクタンスがあると発振する。
コルピッツ発振回路は、トランジスタのベース・エミッタ間容量(cbe)とエミッタ・コレクタ間(GND)間の容量(cce)によりベース側に負性抵抗を発生させ、入力側に発生する寄生インダクタンスとcbe・cce・cobによる共振回路の損失(直列抵抗)を負性抵抗がエネルギーを供給することにより補い(直列抵抗を負性抵抗で打ち消す。)発振回路を形成する。
出力段をモデルにシミュレーションしたところ入力1mVに対してベース地点で入力以上の電圧が観測される。これが負性抵抗の効果と解釈している。
; 1段エミッタフォロワによる負性抵抗のシミュレーション .ac dec 100 10 1000Meg Vs 1 0 ac 1mV rs 1 2 39.4 G1 03 2 3 4 ri 2 3 103 cbe 2 3 7024p cob 03 145pF Re1 3 0 8 cl 3 0 {x} .param x=1 .step param x list 4700pF 0.047uF 0.47uF .probe .end |
下記左図のコルピッツ発振回路の発振条件は gmR >= cbe/C である。エミッタ接地風に変形すると、右図になりgmRは、エミッタ接地回路の電圧利得である。コルピッツ発振回路はエミッタフォロワではなく、エミッタ接地回路であることがわかる。
ベース・コレクタ間に負性抵抗が発生するので、コンデンサやコイルの損失をキャンセルし発振をすることができる。
発振を抑えるためには、ft/hfeのt小さいトランジスタ(cbeが大きい)を用いるか、ベース抵抗を接続して等価的にgmを下げる必要がある。現実のトランジスタに小さい抵抗値のベース広がり抵抗が存在しているため、容量や寄生インダクタンスには、いくらかの発振に対する抑止力となっている。負性抵抗の値は、gm/(4*π*π*f*f*cbe*C)であらわせる。f=ft/hfeとして計算値の抵抗値をベースに入れるとほぼピークがなくなるが、かなり大きな値(1kΩ)で現実的ではないと思う。
方形応答で用いられる0.1μFは、cbeに対して非常に容量が大きいため、寄生インダクタンスがあれば容易に発振器になりうる。
2段エミッタフォロワの場合
ドライバ段のhfeが533kHz以上で低下し出力インピーダンスが上昇するL性となる。
ただし、ドライバ段入力側の入力容量が大きい場合、L性の効果が薄れる。
出力段のhfe低下により出力段のインピーダンスが下降しC性に見える。
出力段の入力側に発生する寄生インダクタンスや上記の出力段のC性・ドライバ段のL性にと負性抵抗により発振回路を形成する。エミッタフォロワはトランジスタのgmが大きいので出力インピーダンスを低くできるが、トランジスタのベースとエミッタ電流は1+hfeの関係があるため、入力・出力それぞれの影響が干渉することが欠点である。したがって2段エミッタフォロワの周波数特性は複雑になるため、シミュレーションによる解く。なお、エミッタフォロワの周波数特性に発振やピークがでるのはMHzオーダーなので、全体のNFBで押さえ込むことはできないため、エミッタフォロワ単体でピークが生じないようにしなければならない。
シミュレート(配線の寄生容量やインダクタンスは無視 入力信号源インピーダンス 4.7kΩ)での感覚は、
- パワー段のrbは単体より少なく(330Ω 実際の回路でこんな大きな値は見ないが)てもピークが出ない。(ドライバ段のZoが高域では高い)
- ドライバ段のrbはほとんど利かない。ドライバ段の入力側は4.7kΩでドライブされている。また、パワー段のhfeにより負荷容量がhfe分の1に低減されている。またアイドル電流が少ないことからgmも低く、周波数特性の良いトランジスタを使用しているのでcbeも少ない。発生している負性抵抗が小さな値であるため、ドライブ抵抗により打ち消されていると考えられる。2段目に負荷抵抗をつながないほうが安定するということになるかしれない。
- ドライバー段のコレクタ・ベース間に10pFを接続するとピークはなくなる。負荷に0.1μF接続し、方形波応答をみると10pF以上でリンキングが激減する。この程度の容量になるとcobは通常のアンプ程度の容量となってしまう。ベース・エミッタ間容量もあまり変わらないような気がする。もちろん2段目の負荷容量が増えるため、その点も考慮すべきである。
- 低インピーダンスでドライブされていればf特にピークは生じない。入力側のポールが支配的である。-3dB ポイントが10MHZ程度、位相は100度程度回っている。1MHz程度までは位相の回転は無視できそうだが、3.8MHz程度で45度回っている。-6dB/Octより位相の回りが速い。信号源インピーダンスが1k~33kまではピークが生じるが、47k以上ではピークが生じない。信号源インピーダンスが中程度の時、ドライバ段のベースコレクタ間にコンデンサを接続するとピークを抑えることができる。f特はほぼ cobと信号源インピーダンスで決まるとみなせる。
2段目の信号源インピーダンスを4.7kΩとした場合、ドライバ段のベースコレクタに20pFを接続することとして設計を進める。
2段目とドライバ段の間に発生するポール
C=20pF+20pF+4.5pF=44.5pF
R=4700
fc3=1/(2πCR)=1/(2π*44.5pF*4700)=761kHz
全利得
AV=Av1*Av2*Av3*Av4=2*1.03*724*0.997*0.970=1442
各ポールの利得と位相
fc2 452kHz 1442 45度 //初段-2段目
fc3 761kHz 1442/(761kHz/452kHz)=856 104度 //2段目- ドライバ段
fclosed 761kHz*(856/11)^(1/2)=6.71MHz 11 173度
fc 6.71MHz*11^(1/3)=14.92MHz 180度
位相補正をしない場合、クローズドループカットオフ周波数で位相余裕が180度より回るため確実に発振する。
よって、位相補正を検討する。
目標位相余裕を70度とすると。2個目のポールfc3よりクローズドループカットオフ周波数が低い位置になければならない。第一ポールを第2ポールの1/10以下にセットして第2ポール時の位相回転を90度と固定できるようにする。第2ポールは、180-90-70=30度しか回ってはいけない。761kHzの時11倍として30度の位相とする場合、761kHz*tan 30=439kHzとなる。よって、400kHzと仮定し、2段目のミラー効果を使うものと仮定し、位相補正容量を求める。
400kHzの位相補正前の利得は、1442なので、これを11にする必要がある。よって、第一ポールは452kHz*11/1442=3.48kHzとなる。このときの位相補正容量は、C=1/(2πfR)=1/(2π*3.48k*1396)=23623pFとなる。2段目の利得が、724なので、Cf=23623/(1+724)=33pFとなる。
8Ω // 0.1μFの負荷を接続したとき555による10kHz方形波発振器で方形波応答を実際に確かめたところ、位相補正なしではコンデンサがなくても発振、10pFではかなり大きなリンキングが発生していた。39pFでリンキングが実用上差し支えないレベルになったので、この値とした。このときドライバ段の位相補正容量を接続していなかった。ドライバ段のエミッタフォロワには10pFを2個接続する。
実際の周波数特性(open,closed)と位相特性(closed)
出力帯域幅の確認
初段
ID=0.532mA C=39pF
SR=ID/C=13.64M/s
2段目
IC=3.85mA C=44.5pF
SR=IC/C=86.5M/s
エミッタフォロワはAB級動作なので、SRは計算しない。
初段で決まるため、fp=SR/(2πV)=13.64M/(2π*√6)=886kHz となり十分である。
電源部(2ch時)
汎用のトランスを用いた。
電圧段は二次側の巻き線が2回路あるトランス(20V*0.1A*2)を用いた。
出力段は、手ごろなトランスが無かったので、正負それぞれ1個ずつ(6V 1A)使用した。
出力段はトランスの入出力の結線を正負で逆とし、商用電源の2線に対してシャーシとのストレー容量が等しくなるようにしてみた。整流回路は正負別としてみたが、コモンモードノイズに対しては、同じ整流回路でうまく打ち消せないか思考中である。
電源トランスは、ステレオアンプ時代からの流用しているので、4ch同時に最大出力は出せないと思われる。
電源トランスの巻き線抵抗は0.86Ωであった。当初4700μFとしていたが、4chにしたらハム音が聞こえるようになったので、コンデンサを並列に接続し約10,000μFとした。4chがいっせいに出せる{VCE(sat)=0と仮定した場合 RL=2Ω}、最大出力は、2.8Vp -> 0.175W*4となってしまいます。コンデンサが0Vから2.8VpまでRL=2Ωの時立ち上がる時間は、1/120Hz*5=0.042sである。23Hz以下では、電源の影響で出力が立ち上がらない可能性がある。
電源部(4ch時)
トランスを9V*3A 2個に変更する。(ケースの高さの関係で手持ちのものが収まらないので断念した。)
コモンモードノイズに対してトランスの接続をどのようにしたら良いか検討するために、トランスのSPICEモデルを検討した。
絶対値を調べるのではなく傾向がわかればいいので、すごく適当にモデリングする。
9V*3A=27VA
励磁電流 27VA/100V*0.05=0.0135A
リアクタンス 100V/0.0135A=7407Ω
1次インダクタンス 7407=2*π*f*L L=7407/(2*π*f)=7407/(2*π*60)=19.6H
2次インダクタンス 19.6/(100/9)^2=0.159H
結合係数は理想値である1とする。