スピーカ PRIME 92F-A8515 について

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購入経緯

大須のボントンで購入した2本で840円のスピーカーである。アンプの動作確認用に購入した。

変更履歴

2014.05.10 Fostex BK85WKの寸法の間違いを修正しました。

PRIME 92F-A8515の特性

ネットで調べてみると素性は不明。メーカーに問い合わせたところ、いろいろ調べてくれ、仕様書を入手するができました。お忙しい中、韓国から仕様書を入手していただき、ここでお礼を申し上げます。
2008年にスポット(限定)生産されたもので細かいパラメータはないようです。入手しやすいFOSTEXで近い口径のものと比較してみました。

PRIME 92F-A8515 FOSTEX FE103En FOSTEX FE83En FOSTEX FW108N
仕様 9.2cmフルレンジ 10cmフルレンジ 8cmフルレンジ 10cmウーファー
インピーダンス
最低共振周波数 f0 150Hz 83Hz 165Hz 55Hz
音圧レベル 86dB*W/0.5m換算 89dB*W/1m 88dB*W/1m 86dB*W/1m
定格入力 5W 15W(Mus.) 7W(Mus.) 50W(Mus.)
最大入力 8W
再生帯域 f0~20KHz f0~22KHz f0~30KHz f0~10KHz
M0 2.55g 1.53g 6.9
Q0 0.33 0.84 0.26
a 4.0cm 3.0cm 4.0cm

PRIME 92F-A8515の詳細は仕様書(PRIME speaker 提供)を参照してください。

密閉型エンクロジャーを設計するのに必要なパラメーター

エンクロジャーを設計するには下記のパラメータがほしい。

公称インピーダンス Z

最低共振周波数f0より高い周波数で一番インピーダンスが低いときの値を表す。

最低共振周波数 f0

スピーカーをエンクロジャーに入れていない状態でインピーダンスが一番高いときの周波数を表す
\displaystyle f_0=\frac{1}{2\pi} \sqrt{\frac{S_0}{m_0}}

振動系等価質量 m0

コーン紙・ボイスコイルおよび空気の質量を足した値である。

スチフネス S0

エッジやダンパーの硬さを表す。コンプライアンスはスチフネスの逆数である

再生周波数帯域

JISでは下限は最低共振周波数、上限は、中域の平均レベルより10dB下がった地点の周波数を表す

振動系のQ0

カタログに記載されていない場合は、下記の式で計算できる。
\displaystyle Q_0=\frac{f_0}{\Delta f} \frac{Z}{Z_{max}}
Zmax:f0の時のインピーダンス
\Delta f=f_2-f_1
\displaystyle \frac{Z_{max}}{\sqrt 2}の時の周波数をf1,f2とおく

実効振動半径

カタログに値が掲載されていない場合は、スピーカーの中心からエッジの1/2の位置の寸法を計測して求める。

m0を測定する

測定方法

m0は最低共振周波数(f0)から算定できる。ただしS0を未知数なので、振動板に1円玉1個を貼り付けことにより重量が増えf0が下がる。2つの周波数があれば連立方程式で算定することが可能となる。
ちなみに、f0はエンクロジャーに入れる前のスピーカーの最低共振周波数である。インピーダンスが最大の箇所がf0となる。標準状態と振動板重量を増やした場合のインピーダンスを測定した結果が下図のとおりである。
縦軸がインピーダンス、横軸が周波数である。測定は10mWで行った。

測定結果

10 100 1000 10000 100000 0 5 10 15 20 25 標準 振動板に 1 gの重 りを追加した場合 SVGの代替画像
カタログ値より標準状態のf0は高かった。振動板を重くした場合、最低共振周波数が40Hz下がった。口径の小さいウーファーが能率が低いのは、故意に振動板を重くして最低共振周波数を下げている。上記のFW108Nが古典的な例である。振動板が重くなれば能率も下がる。スピーカーの特性比較表を掲載したのはその辺の感じを味わってもらいたいためである

m0の計算

\displaystyle f_0=\frac{1}{2 \pi} \sqrt{\frac{S_0}{m_0}}の計算式を応用する。
測定結果より
f0=190Hz,f1=150Hz(重くした場合)
が決定している。
重くした場合の振動系等価質量をm0+1で表す。(1g増やしたから)
それぞれ式に当てはめると
\displaystyle 190=\frac{1}{2\pi}\sqrt{\frac{S_0}{m_0}}
\displaystyle 150=\frac{1}{2\pi}\sqrt{\frac{S_0}{m_0+1}}
求めたい変数が√の中なので、両辺を2乗する
\displaystyle 150^2=(\frac{1}{2\pi})^2 \frac{S_0}{m_0+1} ---式2
\displaystyle 190^2=(\frac{1}{2\pi})^2 \frac{S_0}{m_0} ---式3
\displaystyle \frac{S_0}{m_0}形式に変形する。 \displaystyle 150^2 \times (2 \pi)^2= \frac{S_0}{m_0+1} ---式4
\displaystyle 190^2 \times (2 \pi)^2= \frac{S_0}{m_0} ---式5
式4をs0=に変形する。
\displaystyle 150^2 \times (2 \pi)^2(m_0+1)=S_0 ---式6
式-5に式-6を代入してm0を求める。
\displaystyle 190^2 \times (2 \pi)^2=\frac{150^2 \times (2 \pi)^2(m_0+1)}{m_0}
両辺に共通する(2 \pi)^2を消す
\displaystyle 190^2 =\frac{150^2 (m_0+1)}{m_0}
m0を両辺に乗ずる
\displaystyle 190^2 m_0=150^2 (m_0+1)
m0を解く
\displaystyle \frac{190^2}{150^2} m_0= m_0+1
\displaystyle \frac{190^2}{150^2} m_0- m_0=1
\displaystyle (\frac{190^2}{150^2}-1) m_0=1
\displaystyle m_0=\frac{1}{\frac{190^2}{150^2}-1}=1.654

振動系のQ0を求める

インピーダンス特性より下記の式で計算する
\displaystyle Q_0=\frac{f_0}{\Delta f}\frac{Z}{Z_{max}}
Zmax:f0の時のインピーダンス 17.52Ω
\displaystyle Z=\frac{Z_{max}}{\sqrt 2} = 12.39 \Omegaは12.39Ωとなる
大雑把にf2=220Hz,f1=160Hzとすると \Delta f=f_2-f_1=220-160=80Hz \displaystyle Q_0=\frac{f_0}{\Delta f} \frac{Z}{Z_{max}} = \frac{190}{80} \frac{8}{17.42}=1.0907となる
このスピーカーは異様にQ0が大きく、中域に対して最低共振周波数付近の出力音圧レベルが持ち上がっている。

実効振動半径 a 実測で3.5である

エンクロジャーの設計

内容積

密閉箱とする。低音が不自然にぼんぼんならないようにしたいが、ユニット自体の特性が、低域が持ち上がっている。よってバスレス等にいれるとぼんぼんとなったりし締りのない音になる。
エンクロジャーに入れた時の最低共振周波数f0cは(Q0c=1.2Q0で設計)
\displaystyle f_{0c}=\frac{Q_{0c}}{Q_0}f_0=1.09 \times \frac{1.2}{1.09} \times 190=228Hz
\displaystyle \alpha =(\frac{Q0c}{Q0})^2-1=(1.09 \times \frac{1.2}{1.09})^2-1=0.44
必要なエンクロジャーの内容積は
\displaystyle V=\frac{355a^4}{\alpha \cdot {f_0}^2 \cdot m_0}=\frac{355 \times 3.5^4}{0.44 \times 190^2 \times 1.654}=2.03L
スピーカーやターミナル等の体積を考え、3L程度で考える。

寸法の決定

縦横奥行比を単純な整数比にすると定在波が発生するため注意する必要がある。同程度の容量の市販品などを参考にするとよい。今回は、本棚にきれいに収まる大きさを前提とする。
板厚を含めた高さを27㎝以内、横幅はユニットが収まる最小幅以上である9.2㎝以上、奥行きは、同様に5㎝以上とする。
FOSTEXのカタログより同程度の内容積をもつFF85WKの奨励スピーカーボックスBK85WKを参考とする。
外形寸法 132(W)*247(H)*195(D) 板厚18/12 3.5L
内寸の縦横奥行比 108(W)*223(H)*149(D) 1:2.06:1.38